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あの日にドライブ/荻原浩/光文社

人生は偶然でなりたっている度★★★☆☆

男の身勝手さ全開…
タクシーのワンメーター乗りは、あまりしないようにするかな…



あの日にドライブ
荻原 浩(著) 光文社


タクシーの運ちゃんたちの隠語がなかなかおもしろい。
長距離は「ロング」、1万超えは「マンシュウ」
「土佐でサンマ漁」は笑ったなぁ(*^^)

主人公牧村伸郎は、なぎさ銀行の日本橋支店営業二課課長。
次の異動で副支店長か本部の次長に昇格するはずだった。
しかし、普段なら「おっしゃるとおりです」と言い続けてきた銀行マンの伸郎は、ある日、支店長に言った、たったひと言のためにエリートコースをはずれてしまう。
辞表をだし途方に暮れていた伸郎だが、家族の手前働かない父親はまずいと思い、求人広告でたまたま目に留まったわかばタクシーで運転手をしている。しかしこれは転職へのつなぎ仕事だと考えている。
ノルマにまったく届かず、ストレスからか円形脱毛になってしまい、自分には合わない仕事だ、と絶望中。
銀行にいたというエリート意識も捨てられずに苦戦している。

こんな最悪の状態が伸郎を妄想の世界へと走らせる。この妄想癖が技術的にレベルアップしたりするのが笑える。
過去に戻って、もちろん今よりずっといい生活環境をフルカラーで創り上げる。
あー妄想って、くだらない…
わたしもすぐ妄想するからよくわかるけど、時間の無駄だなぁ…と改めて感じた\(^^;)

さて、伸郎のバーチャル人生修正版はどこまで突っ走るのか?
円形脱毛は治るのか?
支店長に言ってしまった、たったひと言とは?

タクシー運転手さん!ご苦労さまです!って言いたくなる本ですねー


とにかく、妻とうまくいってないわけです。
伸郎が銀行を辞めてしまっただけなのに。今の自分のつらさを妻・律子と結婚したせいだと考える最悪の夫。長年生活を共にしてきたから新鮮味がなくなっただけなのに、嫌な男だ!
忙しく過ごしてきたから、子どもとのコミュニケーションもうまくとれない。
律子は家計のためにパートにでて、伸郎は、勝手に妻は自分を恨みがましく思っていると疑っている。
自分のせいなのに、ひどいヤツだ!
それで、学生時代付き合っていた恵美と結婚していたら、自分の未来は明るかったはずだ!と妄想するんですよ…
くだらん!
結果はわかっているし、過去に目を向けてあーだったらこーだったらって思ったって、ひとつもいいことない。
そんなことは十分わかってるのに、たまに自分も思ったりしちゃう。。。だからなのか、伸郎の行く末が気になって気になって。
アホ男が自分に重なっちゃうから、「早く気づけ~~」って説教しながら読んだ感じ。

でも、ほんと、タクシーの運転手さんは過酷だ。
伸郎が仕事に慣れてきて、そしてノルマ超えを達成するときは、いやー爽快爽快。
仕事の成果って、もちろん運も左右するんだけど、伸郎は、隊長さんと言われているノルマ達成おじいさんのお知恵を拝借して、努力して努力してノルマ達成するんですっ。
この部分読んだときは元気がでたなぁ!

わかばタクシーの社長もなかなかおもしろいキャラクター。
カラオケ付きタクシーとか訳わからんアイデアを出してくるし、毎週水曜日の全体朝礼で、だらだらと社員の士気を高めようと語るが、逆に皆の気分を落ち込ませる。よくいそうないい感じの社長だな。
この社長が自費出版したっていう『我がタクシー人生-金はあの道にころがっている』は、なかなか笑える本なんだろうなぁ。読んでみたい☆
あと、伸郎が学生時代から銀行ではなく入社していたら。。。と後悔している児童書の出版社がある。その出版社、青羊社の実態はありそうな話しでなかなか笑えた。さすが荻原先生♪

てっきり、伸郎が過去にさかのぼるやり直し小説だと思っていたけど、妄想と現実をつなげようとする伸郎のあがき作品だった。
これでよかった。その手のファンタジー小説だと、やっぱり今の自分に満足っていう結論になる、って決まっている感じがするし。
最初重松清の流星ワゴンと似たような印象があったけど、終わってみればぜんぜん違った。それぞれの良さがあったな。

過去には戻れないし、こっちの道に行っていたら…なんて考えていたら、人生どうしようもない。
伸郎は悟る。
「みんなが次の角をうまく曲がれば、この先の分かれ道を首尾よく選べれば、そう考えて積み重ねていく道の先には、大きな空白しかないのだ。」

そうだよなー。。。がんばろっと!
と思えたわけです(^_-)-☆

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2006年07月03日 荻原浩 トラックバック(3) コメント(0)

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(書評)あの日にドライブ

著者:荻原浩 あの日にドライブ価格:¥ 1,575(税込)発売日:2005-10

2007年03月15日 たこの感想文

■ あの日にドライブ 荻原浩 

あの日にドライブ荻原 浩 光文社 2005-10-20by G-Toolsエリート銀行員だった牧村伸郎は、部下のために、支店長にうっかりたった一度逆らってしまったためにリストラ。なかなか望みどおりの再就職先がなく、つなぎにと、タクシー会社に運転手として就職します。タクシー会社

2006年07月04日 本を読んだら・・・by ゆうき

△「あの日にドライブ」 荻原浩 光文社 1575円 2005/10

 自分の人生であの角を曲がらなかったら、どんな人生がそこに展開していたのだろう。もし今、やり直せるとしたら、自分はどこからやり直すだろう。中学?高校?大学?それとも・・・なんてことは評者は全然考えないし、考えてもやり直したいとは思わないし、どこからやり直

2006年07月03日 「本のことども」by聖月