小さき者へ/重松清/新潮文庫
「解決しなさかげん」度★☆☆☆☆
ビートルズは世代をこえて愛される!
不器用な父親の正直な気持ちがひしひし伝わってきます。
短編6編。
『定年ゴジラ』を紹介してくれた方が、最近の重松さんではこれがよかったと教えてくれた。
その方はビートルズが大好きだし、ビデオもいっぱい貸していただいた♪まだ小さいけど息子がいるし、どうも表題の「小さき者へ」のお父さんと同世代らしい。
これは、はまっただろうなぁと思った。
わたしは息子もいないし、ビートルズもビデオ屋バイトのときに他の店員が店でいつも流していたから知らず知らずのうちに知って好きになった、程度。それなのに、とってもよかったし、切実さが伝わってきて「お父さん」の息苦しさが伝わってきた。
短編でこれだけ家庭内のイメージを湧かせてそこにこんなに感情移入させるなんて、やっぱりすごいなぁと思った。
短編6編。どれも、まだまだ幼い子どもや家族の、歩み寄りやすれ違いが描かれている。
重松さんはあとがきで、
「解決しなさかげん」が際立つものとなった。〜一件落着の場面がないことにご不満を抱かれたひとにはお詫びする。でも、それが、ぼくの考える生きることのリアルだ。〜頼りなげにでも足を踏み出した主人公たちの姿が、読んでくださった皆さんの胸に浮かんでくれれば、なによりの幸せである。
と言っている。
でも、わたしはそんな不満はなかった。一件落着してほしかった作品もあったけれど、それよりも何よりもお父さんの情けなさやかっこ悪い意地の張り合いを知らされれば知らされるほど、子どもが思ってるよりも何倍も何千倍も気遣ってくれていると感じさせる。いろんなお父さんの想いを見せられたようで照れくさかったりじーんとしたりした。
特に「団旗はためくもとに」のラストは涙がでた。
女の子のお話しだからなのかな。
応援団長だったお父さんは、何かと「押忍!」とエールを贈る。高校生くらいの女の子なら恥かしいし、こういううざいって態度とっちゃうのもよくわかる。
こんなお父さんはなかなかお目にかかれないけれど。でもこれほどじゃなくても熱いお父さんっているだろうし、近くにいたらうんざりだけど、きっと大人になったときこのお父さんのことは好きになれる。
「押忍!」の心は、言い訳をしない心なんだ、とお父さんはいう。
応援してもらえないひとには、応援するひとの気持ちなんてぜったいわからない、とお母さんはいう。
なんだか耳が痛い。いろいろ考えてしまう言葉だった。
言い訳するくらいなら…いつも後悔するし、応援するひとの気持ちを考えたことはなかったかもしれない。
「海まで」は、おばあちゃんの不可解さに腹を立てた。でも、孫に冷たくあたったり、ひいきしたりするおばあちゃんはいるのだろう。わたしはここまでひどい体験がないから悲しくて仕方なかった。おばあちゃんって分け隔てなく孫を可愛いと思う、なんて、勝手にわたしが思ってる幻想なのだろう。おばあちゃんもひとりの女だもんな。おばあちゃんが生きていたら女同士の話ももっとできたかもしれない、ってしんみりした。
いろんなセリフにドキッとさせられる。たまに読み返したい1冊になった。
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